奨学金の基礎
人生の三大支出の一つといわれる教育費。教育費をまかなう方法として、進学する子ども自身が奨学金を受けるという方法があります。奨学金とひと言でいっても多種多様な種類がありますが、今回は数多くの奨学金のうち代表的な存在の日本学生支援機構の奨学金について主にご紹介します。
知っておきたい奨学金制度
(1)日本学生支援機構の奨学金制度-貸与型-
独立行政法人日本学生支援機構(以下、日本学生支援機構)は、学生支援事業を総合的に実施している文部科学省所管の団体です。奨学金といえば、日本学生支援機構を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。日本学生支援機構の奨学金は日本の代表的な奨学金制度であるといえます。
日本学生支援機構の奨学金には、返還が必要な「貸与型」と返還が不要な「給付型」があります。貸与型奨学金には利子がつかない「第一種奨学金」と利子がつく「第二種奨学金」があり、第一種の選考基準は第二種より厳しいものとなっています。また、第一種、第二種奨学金に加えて、入学した月の奨学金の月額に一時金として増額して貸与を受けることができる「入学時特別増額」があります。ただし、入学時特別増額のみの貸与を受けることはできません。
申込方法は、進学後に大学を通じて行う「在学採用」(貸与型のみ)と、進学予定として貸与の予約をしておく「予約採用」(貸与型・給付型)があります。予約採用は、高校3年生の4月以降、在学する高校を通じて申し込みをします。高校によって募集回数や締切時期は異なります。予約採用の決定を受けておけば、進学後所定の手続きをするだけでスムーズに貸与を受けることができ、大学費用の見通しがたてられとても安心です。ぜひ予約採用を申し込んでおきましょう。
(2)日本学生支援機構の奨学金制度-給付型-
日本学生支援機構の給付型奨学金は2017年度から新しく始まった制度です。在学中、月額20,000円~40,000円(2018年度進学者の場合)の給付が受けられ、卒業後も返還の必要がないのはとても助かります。給付型の選考基準には家計基準、学力・資質基準、人物・健康基準が設けられており、各高校にて定める推薦基準に基づいた推薦を受けていること、かつ住民税非課税世帯などの人であることとされています。貸与型の第一種と第二種との併用も可能です。
給付型奨学金は始まったばかりの制度のため今後内容が変更となる可能性もありますので、日本学生支援機構のホームページなどで最新の情報を確認してくださいね。
また日本学生支援機構の奨学金には海外留学の奨学金もあります。海外への留学を考えているという人は利用できないか確認してみましょう。
(3)自治体の奨学金制度
都道府県、市町村でも奨学金を設けている場合があります。それぞれ申し込みする際に定められた条件がありますが、地方自治体の奨学金なので、学生本人や保護者がその自治体に住んでいることなどを申込条件にしているものが多いのが特徴です。お住まいの地方自治体で利用できる奨学金制度がないか、各自治体のホームページなどで確認してみましょう。
(4)民間企業、民間財団の奨学金制度
企業や財団法人など民間団体が設けている奨学金も数多くあります。申込方法、申込期間など条件や金額は募集している企業や団体によって異なります。自分が応募できるものがないか条件をしっかり確認しましょう。
民間企業、民間財団の奨学金制度の例
団体名 | 対象者 | 金額(月額) | 種類 |
---|---|---|---|
あしなが育英会 | 病気、災害、自死(自殺)など道路上の交通事故以外で保護者を亡くしたり、保護者が著しい障害を負っている家庭の子ども | 大学・短期大学 40,000円または 50,000円 |
貸与 (無利子) |
日本証券奨学財団 | 大学または大学院に在学し、学業優秀で、心身ともに健康であって、次のいずれにも該当するもの ・学資の援助をすることが必要であると認められる者 ・将来社会的に有益な活動を目指す者 ・在学する大学によって推薦された者 |
大学2年次から原則3年間 (自宅) 35,000円 (自宅外) 45,000円 |
給付 |
(5)大学独自の奨学金制度
大学独自の奨学金を設けている大学も数多くあります。大学独自の奨学金は経済的な基準を設けず、成績優秀者が対象となるものもあります。これまで経済的な基準で奨学金の申し込みができなかったものの少しでも学費負担を減らしたいと思う人にとって、心強い制度であるといえます。
こちらも、申込期間や申込方法など大学によって異なりますので、大学窓口やホームページで確認してください。
貸与型の奨学金は返済計画をしっかりと!
貸与型の場合は貸与期間終了後、返済していく必要があります。貸与を受ける前から返済額がいくらになるのかを確認して、無理なく返済できるか考えましょう。延滞すると延滞金が課せられたりするケースがあり、最初の予定返済額より大きな金額を返済しなければならなくなります。
返済が難しいときには、日本学生支援機構の場合、諸条件はあるものの、減額返還制度や返還を一定期間猶予してくれる返還期限猶予制度があります。
奨学金が支給される時期に注意!
奨学金の利用を考えている場合には、奨学金が支給される時期に注意しましょう。例えば、日本学生支援機構の奨学金は入学してからの支給になります。大学に合格すると入学金や前期学費など、入学前にまとまったお金が必要になってきますが、奨学金の振り込みを待っていたら間に合いません。大学入学時の費用については預貯金や学資保険などで備えておけば安心です。
奨学金は、さまざまな種類があり、募集要件や内容が随時変わりますので、常に最新の情報を確認しましょう。
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コラム執筆者プロフィール
宇野 さよ (ウノ サヨ) - 公認会計士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
- 大学資金ゼロの状態で大学進学を決め、複数の奨学金を利用するなど、自分で大学資金をやりくりしながら公認会計士試験に合格。出産を機にファイナンシャルプランナーの勉強を始め、ライフプランの重要性を認識。仕事と子育ての時間に追われる日々に疑問を感じ、独立。会計と税務に詳しいお金の専門家として、執筆や個別相談を中心に活動中。
ファイナンシャルプランナー 宇野 さよ
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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