親の年収による教育費格差はある?
教育費はご家庭により支出額が大きく異なる費用です。「子どもには望むなら十分な教育を受けさせたい」と子どもの教育費を最優先で考えるご家庭も多いでしょう。一方で、「我が家の年収に対して、教育費で無理をしてしまっていないか」ということもまた気がかりなところ。ここでは、ご家庭の年収による教育費のかけ方の違いを学習塾費も含めたデータで小学校から高校までご紹介し、あわせて子どもが大学に進学した家庭の年収の分布もご紹介します。
小学校~高校まで 私立は年収が高い世帯の子どもが多い
文部科学省「平成28年度子供の学習費調査」をもとに作成した図1をみると、全体的に私立学校の方が年収の高い世帯の割合が大きくなっていることがわかります。特に私立小学校と私立中学校では、全体の70%以上を年収800万円以上の世帯が占めています。
図1 世帯年収別の構成割合
資料:文部科学省「平成28年度子供の学習費調査」をもとに執筆者作成
塾などの学校外の教育費は年収による差がみられる
次に、塾や習い事にいくらぐらい費用をかけているかがわかる「子供の学習費調査」の詳細をみていきましょう。
図2 公立・私立学校別の世帯年収ごとの学校外活動費平均額
資料:文部科学省「平成28年度子供の学習費調査」をもとに執筆者作成
ここでいう学校外活動費とは、保護者が子どもの学校外活動のために支出した費用のことです。例えば、学習塾費、習い事の月謝、学習机や参考書、パソコンなどの購入費、学習塾への交通費などです。ほかに楽器やスポーツ用具の購入費用なども含まれています。図2から、世帯年収が上がると、おおむね子どもの学校外活動費の費用も高くなっていることがわかります。
また、中学校では、ほとんどの年収区分で公立の方が私立よりも学校外活動費が高くなっています。これは、私立は中高一貫の学校が多いので高校受験をする生徒が少なく、公立の方が学習塾などの費用がかかっているためと考えられます。
あくまで、調査結果は平均額です。世帯年収が高くても塾などにあまり費用をかけていないご家庭もありますし、世帯年収が低くても家計のやりくりや子どもの祖父母からの援助がある結果、教育費を多くかけているご家庭も実際はあります。
次に子どもが大学に進学しているご家庭の年収分布をみていきましょう。
大学生がいる家庭の平均年収は約824万円
大学生のいる家庭の年間収入は、(独)日本学生支援機構「平成26年度学生生活調査」によると、平均約824万円です。しかし、家庭の年収が400万円未満の学生も2割近くいることも注目したい点です。
図3 大学生のいる家庭の年収の分布
資料:(独)日本学生支援機構「平成26年度学生生活調査結果」をもとに執筆者作成
以上のことから、高校卒業までの教育費は親の年収による格差はあるといえるでしょう。子どもの進路や希望はそれぞれだと思いますが、「これから教育費が増えると、我が家の年収では厳しい」と感じているなら、世帯年収を増やす方法を考えましょう。また、年収を増やすだけでなく子どもが小さい時期に教育費を貯めておくことも大切です。
しかし、やむを得ない事情で年収を増やすことが難しい場合や貯蓄ができない場合もあるでしょう。そのような場合は、国や自治体、各大学や支援団体の支援も活用しましょう。親の経済力による教育格差に対して、国や各支援団体も対策をしています。例えば、(独)日本学生支援機構には、経済的に大学進学が困難な人に無利子で奨学金を貸与する制度や、給付型の奨学金制度があります。また、高校の授業料についても親の経済状況に配慮した国や自治体からの修学支援制度などがありますので、情報収集していくことも対策の一つです。親の経済力だけで、子どもの進学をあきらめないようにしましょう。
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コラム執筆者プロフィール
加藤 葉子 (カトウ ヨウコ) - 女性とシングルマザーのお金の専門家
- 離婚を機にお金の勉強を始め、3年間で子どもの教育費を貯める。自身のブログ「女性とシングルマザーのお金の話」に全国の女性から切実なお金の相談が寄せられ、NHKのWEBコラム執筆を機に独立。3年間で1,500件以上の相談を受けている。現在は、女性ファイナンシャルプランナーのための実務講座やオンライン講座を配信中。
マイライフエフピー代表
ファイナンシャルプランナー 加藤 葉子
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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