子どもにまつわるお金の準備と保険
子どもを一人前に育てるには、親の愛情とともに、かなりの額のお金が必要です。これが少子化の一因にもなっています。「もう一人子どもが欲しいけれど、お金がかかるから育てられない」という方が多くいらっしゃるようです。
では、実際にどのくらいのお金が必要で、どのように準備したらいいのか保険でカバーできるものはあるのかを具体的に考えてみましょう。
教育費ってどのくらいかかるの?
赤ちゃんのうちから将来を見通せませんが、親として、こんな子になってほしいというのは思うものではないでしょうか。例えば、サッカー選手になってほしいとか、公務員になってずっと地元にいてほしいとか、国際的に活躍する人になってほしいなど色々考えると思います。あるいはもっと現実的に、高校までは公立に行ってほしい、大学は私立でもしょうがないかとか、中学から私立に行かせて、大学は国立に行かせたい、など具体的なことを考える方もいるでしょう。子どもの進路は親の思い通りにはならないものですが、大きくなったときに、何をしたい、どこに行きたいと言い出したら、親としては何とかしてあげたいと思うのではないでしょうか。
場合によっては想定しているより多くのお金が必要なこともあるかもしれませんが、教育資金としていくら準備すればよいのかわからないのが難しいところです。例えば、高校卒業後の大きな出費に備えて、最低限必要と思われる金額を学資保険などで確実に準備し、それで不足する特別な支出については、他の貯蓄方法で準備するということもできるでしょう。足りない場合は、収入を増やすことも検討したり、子どもとよく話し合い、奨学金や教育ローンを利用したりすることも選択肢のひとつです。
表1 学校種別の学習費総額
※スクロールで表がスライドします。
(単位:円)
資料:文部科学省「平成28年度子供の学習費調査」をもとに執筆者作成
月々の学習費を公立でみてみると、幼稚園が19,496円、小学校が26,859円、中学校が39,880円と徐々に上がり、高校では37,572円と若干下がりますが、子どもの成長とともに、時間の余裕が生まれ、母親がパートに出るなど収入を増やして対応していく家庭は、少なくありません。
このように小学校から高校までの教育費は何とか家計費からやりくりし、その先のまとまった支出を長期間かけて保険や預貯金などの貯蓄で備えるのが、上手な教育費の準備方法といえるでしょう。
教育資金のため方
それでは、高校卒業後の教育費などはどのくらいかかるのでしょうか。文部科学省「平成28年度学校基本調査」によると、高校卒業後、何らかの学校に進学する割合は、7割を超えていますので、進学を想定した準備が必要です。
表2 大学に自宅通学した場合の学費の内訳
※スクロールで表がスライドします。
(単位:円)
資料:独立行政法人日本学生支援機構「平成26年度学生生活調査結果」をもとに執筆者作成
例えば自宅通学の場合、私立大学の学費は、一年におよそ137万円(表2赤枠部分)かかります。これは4年間の学費総額の1年あたりの平均なので、実際には初年度に入学金などで平均より大きなお金が必要になります。大学は、高校までと違い、年払い、半期払いなど、まとめて支払う場合が多いので、一時的に大きな金額が必要になります。
大学にかかる費用データからわかる準備すべき教育資金のうち、大学へ進学する場合の費用約500万円をコツコツと18歳までに貯めるには、長期間の積み立てが必要になります。積み立てる手段として、預貯金されているご家庭もあるでしょうが、学資保険という選択肢もあります。
学資保険は給付金額(学資金としての金額)や積み立ての期間によって保険料が変わります。仮に500万円を学資保険で準備するためには保険料も高めとなり、家計の支出のバランスを考える必要があります。中途解約をすると払い込んだ保険料より低い解約返戻金となるケースの多い学資保険は、中途解約せずに済むように無理なく負担できる保険料から学資金を設定するとよいでしょう。また、学資保険は契約者の告知義務があるので、契約者の健康状態によっては契約できない場合もあります。
貯蓄で教育資金を準備する方法は、毎月コツコツ貯められるものとして、学資保険の他に定期積立貯金、財形貯蓄、積立投資信託などがあります。安全性が高いものからリスクを伴うものもありその特徴を踏まえて自分に合ったもので積み立てましょう。定期預金の自動積立や財形貯蓄は、自動的に貯まり、一度の設定で手間がかかりません。投資信託の積立は、元本が保証されていませんが、リスクを伴う分リターンが望めます。積立期間が長期になればリスクも分散されます。取り扱う証券会社によっては、1,000円からなど少額からの積立も可能です。学資保険と他の貯蓄方法とで教育資金準備をしておくと、急な出費にも対応できます。
子どもにまつわる万一の保障は必要?
子どもは思わぬことをするものです。喧嘩をして怪我をしたり、させたりすることがあるかもしれません。そういうときは場合によっては相手の治療費を払わなければなりません。また、ものを壊したりしたら弁償しなければなりません。このようなときに補償してくれる保険に加入しておくことをおすすめします。「個人賠償責任保険」といって、他人から損害賠償を求められたときに、その賠償金を補償してくれます。
例えば以下のような場合に、相手から求められた損害賠償請求金を補償してくれます。
- ・バルコニーの鉢植えを落として通行人にケガをさせてしまった。
- ・キャッチボールをしているときに誤って窓ガラスを割ってしまった。
- ・買い物中に商品にぶつかってしまいその商品を壊してしまった。
さらに多額の賠償請求が発生する可能性があるのが自転車の事故です。子どもが被害者になることもありますが、加害者になったときは莫大な賠償請求を求められることがあります。実際に子どもが起こした自転車事故で、9,000万円を超える賠償を命じられた判例があります。家計に大きな影響を及ぼす子どもにまつわるリスクに対しては保険で備えましょう。ぜひ個人賠償責任保険には加入しておくべきです。
個人賠償責任保険は、単独の保険商品としてはないので、損害保険会社の他の自動車保険や火災保険に特約として付帯します。すでに加入しているかもしれませんので、保険証券を確認しましょう。保険金額が無制限となっていると安心です。もし、個人賠償責任保険に加入していない場合は、こども用の傷害保険を検討してみましょう。これは子どもの怪我の治療や個人賠償責任保険などの機能を有する保険です。共済保険でも同様のものを取り扱っています。共済保険は、子どもの事故によるけがの保障が中心で、損害賠償補償の保険金額が100万円など低額となっているのもありますので、よく確認をしましょう。
子どもは小さくて弱くて未熟です。いろいろな経験をして大人になっていきます。その間のさまざまなリスクについて、予見して対策を取りましょう。そしていろいろな経験ができるように準備をしておいてあげてください。