生命保険の見直しはこのステップで行う
生命保険の見直しは、既に加入している保険の他、現在の資産や万一の場合に見込める収入、今後予測される教育費などの支出まで全部見直すと、かなりの作業になるでしょう。しかし、不要な保険料の節約ができ、足りない保障を把握した上で生命保険の加入ができれば、万一の場合の不安を取り除くことができるといえます。
既に加入している保険を確認しよう!
生命保険の見直しは、既に加入している保険の点検からスタートします。気をつけたいのは、「保険料を下げるために必要な保障を解約してしまって万一の場合に備えられていない」、逆に、「既に必要な保障は得ていたのに、重複する保険を追加してしまった」ということがないようにすることです。
意外と自分が加入している保険のことを把握していないものです。死亡・病気・ケガに備える保障を、すべて書き出してみましょう。
そのための準備として、保険証券をお手元にご用意ください。もしも保険証券を探して見つからなければ、保険会社に再発行を依頼しておきましょう。
保険以外の備えがどれだけあるか試算しよう!
まずは、一家の大黒柱が死亡するなど、万一の場合を想定するとして、死亡保障について考えてみましょう。保険以外で考えられる経済的な備えには、以下のものが挙げられます。
(1)遺族年金
遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。遺族基礎年金は、18歳に達する年度の末日を迎えるまでの子どもがいる配偶者であれば、子どもの人数に応じて支給されます。さらに、亡くなった方が会社員や公務員だった場合は、遺族厚生年金も支給されます。遺族厚生年金の支給額は、亡くなるまでの厚生年金への加入期間や収入によって異なります。
遺族年金には、さまざまな支給条件があり、支給額も家庭により異なります。一家の大黒柱が起業したり、家族構成が変わったりするなど状況が変わった場合には、再度確認しておきしょう。
図1 子どもがいる配偶者が受給する遺族年金
資料:日本年金機構ホームページをもとに執筆者作成
(2)死亡退職金・弔慰金
会社員の場合は、死亡退職金が受け取れる場合があります。自営業の方は商店会で保険に加入している場合や組合に加入している場合など、所属団体から死亡保険金または弔慰金が受け取れる場合がありますので、確認しておきましょう。
(3)預貯金など、資産の再点検
預貯金がどの金融機関にいくらあるか整理しておきましょう。また、株式など預貯金以外の金融資産も確認して、家族で共有しておくことができれば良いですね。
(4)遺族の見込み年収
遺族の見込み年収を算出します。例えば、現在、育児や介護などで働いていないのであれば、万一の場合に、いつから働きに出ることができそうか、仮定で良いので算出してみましょう。
万一の場合に予想される支出を考えよう!
(1)子どもの教育費
子どもが大学生以下の場合は教育費を見積もっておきましょう。子どもがまだ小さく将来どんな進路を進むか分からない場合には、親の責任としていくらまで負担するか、目標を立てておきます。
(2)住居費
持ち家の場合、住む場所が確保されているため、住居費の負担は抑えられます。住宅ローンがある場合でも「団体信用生命保険(団信)」に加入していれば、万一の場合には団信の保険金でローンが完済できます。他方、賃貸住宅の場合、賃料の支払いが続くことを計算しておきましょう。
(3)遺族の生活費の概算
家庭の収入や考え方によって、生活費のかけ方は大きく変わります。自分で家計簿を2~3カ月つけてみて、何にいくら使っているのか生活費を把握した上で試算してみると良いです。毎月の生活費はいくらぐらい確保したいのかざっくりとでも良いので考えてみましょう。
現時点で必要な保障額を確保できていますか?
予想される支出から保険以外の備えを差し引き、現時点で必要な保障額を算出します。既に加入している保険の保障額と比較して、マイナスであれば保障を追加し、プラスであれば保障を減らすことができます。
図2 保障額の考え方のイメージ
資料:執筆者作成
(1)必要な保障額が確保できていない場合
例えば、子どもが増えた場合、教育費・生活費などの支出が増えることで、結果として必要な保障額も以前より増えているというケースがあります。その場合は、保険金額の増額や、追加で生命保険に加入する必要があります。
(2)必要な保障額を上回っている場合
現時点で必要な保障額を、既に加入している保険の保障額が上回るようなら、保障が大きすぎるので保障額を減らすことが考えられます。保険商品によっては、その時点での解約返戻金をもとに、保険期間をそのままにした保障額の少ない保険に変更し、保険料の支払いがその後は免除される「払済保険」という方法などがとれる場合があります。保障額が多いと判断したら、保険会社に「保障額を少なくしたい」と相談してみましょう。
もし今後、子どもが増える予定であれば、増えた場合の必要保障額も算出してみるといいかもしれません。保障額を減らす場合は、慎重に検討する必要があります。
(3)過不足がない場合
今の生命保険を慌てて見直す必要はないでしょう。ただし、現時点で過不足ない保障でも、将来の生活の変化にも対応できると分かれば、より安心です。例えば、被保険者の万一の場合に月々年金形式で保険金が下りるタイプの収入保障保険に加入している場合は、時間の経過とともに保険金額が減っていくため、保険期間の終了間近で万一のことがあったときに保険金額が本当に足りているか確認しておきましょう。
医療保険・がん保険を見直そう!
医療保険・がん保険については、現在の医療に対応しているかという点から見直しをすることをおすすめします。入院日数が近年短くなっているため、既に加入されている保険で日帰り入院や通院での治療が保障されているか確認しておきましょう。
また、既に加入している保険が、一定期間保障の更新型ではないかも確認してください。更新時に保険料が増額していく可能性があり、保障は80歳までなど、一定の年齢までで終了します。老後の医療費の増加に備えて一生涯の保障が欲しいとお考えならば、早めに検討をしましょう。
人生の節目に訪れる生活の変化の際には、家族への備えの必要な金額が大きく変わっていきます。その都度保険を見直しましょう。ただし、年齢を重ね、健康状態によっては新しい保険に加入などができなくなっていたり、保険料が高くなっていたりする可能性があるため、既に加入している保険を解約する場合には特に慎重に行いましょう。
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コラム執筆者プロフィール
加藤 葉子 (カトウ ヨウコ) - 女性とシングルマザーのお金の専門家
- 離婚を機にお金の勉強を始め、3年間で子どもの教育費を貯める。自身のブログ「女性とシングルマザーのお金の話」に全国の女性から切実なお金の相談が寄せられ、NHKのWEBコラム執筆を機に独立。3年間で1,500件以上の相談を受けている。現在は、女性ファイナンシャルプランナーのための実務講座やオンライン講座を配信中。
マイライフエフピー代表
ファイナンシャルプランナー 加藤 葉子
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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