60歳以上の保険見直しは「転換プラン」に要注意
入院、介護、相続 … 60歳を過ぎるとさまざまな「もしも」が身近な問題として感じられやすくなる半面、年金生活を考えると保険料負担は最小限に抑えたいもの。いざというときのリスクと長生きに伴うリスクのバランスをとるための、とっておきの保険の見直しポイントをご紹介します。
【1】60歳以降は「活かす→ 一時払→ 掛け捨て」の順にチェックする
真っ先にはじめたいのは、加入中の保険の内容確認です。すでに契約されている保障に過不足がないかを確認します。生命保険は加入年齢が上がるほどに保険料も高くなります。加入している保険があるのなら、それを活かす方法を探るのが第一。何歳まで保障が続くか、保障額はいくらになっているか、保険証券で確認しましょう。内容がわからない場合は営業担当者か保険会社の契約者向け窓口に問い合わせれば教えてくれます。
相談にお見えになるお客さまの中には、保険会社に問い合わせをするのに抵抗を感じる方がいらっしゃいます。「新しい保険を売りつけられそうで怖い」というのです。そんなときには、お問い合わせをされるときに同席させていただくのですが、成人されているお子さまや保険の見直し経験のあるお友達に一緒に聞いてもらうのも一案です。
このままの保障で掛け続けておくほうがいいのか、保障を小さくして継続したほうがいいのか、新しく入り直したほうがいいのかを判断してください。現在保険に入っていない、または、このまま掛け続けるのは得策ではなさそうだと思ったら、保険の加入や切り替えを検討します。
60歳を過ぎると、保険料の払込方法は、保障の必要な期間中保険料を払い続ける「全期払(終身払)」か、「一時払」が大半になります。
一時払以外は保険料を払い続ける覚悟を決めて利用しなければなりません。新規に保険に加入する場合は下記の(1)~(3)のいずれかを選択し、情報を集めましょう。
- (1)退職金などのまとまったお金の一部を一時払保険料にあてて加入する(介護保険、終身保険、個人年金保険)。
- (2)ミニ保険(少額短期保険)や終身医療保険、がん保険など、少額の保障で、掛け捨てではあるが日々の生活に支障の生じない範囲の保険料になっている保険に加入する。
- (3)保険ではなく貯蓄の一部を取り置きして対応する。
【2】保険をリフォームする際の注意点
つい最近あったことです。お客さまから「更新を機に保障を減額したいと担当者に言ったところ、(A)と(B)2つのプランを提案されました。どちらがいいでしょうか?」との相談を受けました。お持ちになった設計書を見ると、(A)のプランは「転換」、(B)のプランは「減額」と、お客さまのメモが書いてありました。どれどれと確認させていただくと、なんと2つとも転換契約だったのです!
転換とは、既存の保険を下取りして、その責任準備金(保険会社が保険金を支払うために積み立てているお金で、解約返戻金のもとになっているもの)を頭金にして新しい保険に切り替える、保険の見直し方法のひとつです。まったく違う種類の保険に切り替えたいときには効果的な方法ですが、終身保険などの貯蓄性のある保険から同種の保険に切り替えた場合、貯蓄部分が削られて、掛け捨ての保障にあてられることが多く、注意が必要なのです。
このお客さまの場合も、まさにそういった状態でした。「終身保険600万円、定期保険特約900万円、介護定期保険特約500万円=死亡保障額合計2,000万円」の保険が、
- 提案プラン(A)
- 終身保険100万円、介護定期保険特約500万円、収入保障保険特約年120万円(15年確定年金)
- 提案プラン(B)
- 終身保険500万円、介護定期保険特約500万円
になっていたのです。しかも、現在入っているのは70歳で保険料が払い終わるタイプなのに、提案プランはいずれも「終身払」になっています。お客さまは(A)のプランは転換の提案だとの認識がありましたが、(B)のプランは終身保険を100万円減額して、定期保険特約を取り外したものだと思っていました。しかし、終身保険の保険料払込期間が変わっているのを見て、(B)のプランも転換プランであることに気付いたのです。
このように、減額を依頼したのに転換プランを提案してくる営業担当者は少なくありません。自分で保険をリフォームする場合は、「保険期間」「保険料の払込期間」が変わっていないか、十分にチェックするようにしてください。
【3】月払保険料が数千円で入れる保険もあります
保険料は「年齢が上がるほど高く、掛け捨て保険に比べて貯蓄性のある保険のほうが高くなる」のが基本です。また、加入年齢制限があるので、70歳前後で契約できない保険も増えてきます。
年金収入をもとに保険料を払っていく場合は、保険期間1年のミニ保険(少額短期保険)などに着目するのも一案です。1年ごとに無告知無診査で更新していくタイプで、保障は少額になりますが、毎月数千円程度の負担で入れるものもあります。
たとえば、比較サイト「保険市場」の「死亡保険(生命保険)」比較ページで「70歳・男性」と入力すると、9つの商品が紹介されます(2013年3月3日現在)。このうち7つの商品がミニ保険です。死亡保障だけのものから入院保障もセットされているものまでさまざまあります。たとえば「月払保険料1,000円で死亡保障25万6,400円」というものもあり、面白いですよ。一度ご覧になってくださいね。
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気になる 少額短期(医療保険)を調べる執筆者プロフィール
柳澤 美由紀ヤナギサワ ミユキ
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®
長崎県出身。関西大学社会学部にて産業心理学を専攻。「専門知識と真心で、日本の家計を元気にする」がモットー。ライフプラン、資産づくり等のアドバイスを軸に、従業員さま向けライフプラン研修等も手掛ける。相談件数は1,000件以上。ライフスタイルなどを丁寧にお聞きして、資産を増やす仕組みを作るのが得意。
家計アイデア工房 代表
- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
- ※ 掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
- ※ 掲載日は2013年3月14日です。