終活と生命保険その2~葬儀の生前予約と終身保険
人生の終わりをよりよいものにするための「終活」には、葬儀の生前予約と相続対策も含められると考えられます。
葬儀の生前予約とは、ご自身のお葬式について費用を含め、どのような葬儀にしたいかなどの希望を生前に葬儀社などに伝え、契約しておくことをいいます。「自分の希望に沿った葬儀にしたい」、「費用の準備を含めてすべての段取りを決めておきたい」といった場合、生前予約をしておくことで希望をかなえられることがあります。また、相続対策が必要な場合は終身保険などで備えることも検討しておきたいところです。
ここでは、葬儀の生前予約でできることと、終身保険でできる相続対策についてお伝えします。
葬儀に関する意識について
葬儀を行う場所や葬儀内容についてどんなふうに意識をされているのか統計からみていきますので、参考になさってください。
(1)葬儀はどこで行われているか?費用はいくらかけているのか?
文化庁の「宗教関連統計に関する資料集」によると、実際に葬儀を経験した方に「故人の葬儀の場所」を尋ねた質問では、「斎場・葬儀会館」が57.8%で最も多く、次いで「自宅」が22.6%、「宗教施設(寺・教会・神社等)」が12.3%です(2011年の調査)。
経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」から葬儀の費用についてみると、2017年は1件あたり平均約140万円の葬儀費用がかかっています。
(2)葬儀の希望
前述の宗教関連統計に関する資料集によると、自分自身の葬儀について7割近い方が「本人の希望を尊重して実施される葬儀」にしてほしいと希望されています(2012年の調査)。
図1 葬儀についての希望
資料:文化庁「宗教関連統計に関する資料集」をもとに執筆者作成
(3)生前から始める葬儀の準備
葬儀について家族などに負担をかけたくない、ご自身の葬儀への希望をかなえたい、また、頼れる家族などがいない、などのとき利用できるのが「葬儀の生前予約」です。
葬儀の生前予約とは
冒頭でも触れましたが、葬儀の生前予約とは、葬儀社などと自分自身の葬儀の段取りや費用を生前に契約することです。生前に自分自身で契約するため、納得できる内容を選択しやすいといえます。契約の際、打ち合わせする内容は、例えば、
- ・葬儀の形式
- ・葬儀の場所
- ・葬儀に参列してもらいたい人
- ・遺影に使う写真
- ・葬儀の時に流してもらいたい音楽
- ・ご家族へのメッセージ
- ・埋葬の方法(墓地、納骨堂、樹木葬、海洋散骨など)
- ・遺品整理
- ・費用
などがあります。
また、契約どおりの葬儀が行われたか、第三者機関が監視する仕組みをとっている葬儀社もあります。
(1)葬儀費用はどこが管理するのか?
葬儀費用を事前に支払う場合は、支払った費用がどのように管理されるのか注意しましょう。信託銀行や信託会社などへ費用を全額信託財産として預け入れるシステムであれば、葬儀社ではない第三者に信託されることで、もし葬儀社が倒産をしても信託した費用は守られます。葬儀費用は葬儀が行われた後、信託銀行などから葬儀社へ支払われます。
(2)契約は誰が実行してくれるの?
一般的に生前予約の契約をする場合、実際に葬儀を行う喪主候補者を決めます。
血縁者がいないときなどに友人や弁護士を喪主候補にする方法や、葬儀社に依頼する方法もあります。
また、契約はしたけれど何らかの理由で取りやめたいといったとき、解約もできます。その場合は解約費用が発生することがあります。
(3)葬儀と精算の流れと注意点
葬儀の生前予約を契約した方が亡くなったときに、その事実が葬儀社へ伝えられると生前に決めた葬儀内容に従って葬儀が行われます。
実際の葬儀費用は増減するケースもあり、事前に預けた費用を下回る場合でも返金はしない、不足が発生した場合は喪主候補者へ請求する、としている葬儀社もあります。
どこまでの範囲が生前予約できるのか、不足分が発生した場合どのように対応するのか、契約前には十分な注意が必要です。
財産の整理について考えてみよう
(1)相続財産はないと思っていても
相続財産はないと思っていても、最高裁判所が公表する「司法統計」から遺産分割事件でいくらの相続財産が争われているのかをみると、「5,000万円以下」が42.4%と最も多く、次いで「1,000万円以下」の33.1%となっていて、合計で75.5%になっています。亡くなった方が持ち家にお住まいならば、相続財産が1,000万円を超えることは少なくないでしょう。いざ相続が発生したときに相続人の間で争いが起きることがないように事前に対策をする必要がありそうです。
図2 遺産分割事件で争われる相続財産の金額
資料:裁判所「司法統計家事平成28年度」の「第52表 遺産分割事件のうち認容・調停成立件数(「分割をしない」を除く)-遺産の内容別遺産の価額別-全家庭裁判所」をもとに執筆者作成
また、遺産分割での調停などの審理は、1年以内で決着することが多いのですが、少数ながら3年以上かかるケースもあります。
(2)終身保険で相続対策
生命保険の終身保険を活用した相続対策があります。
被相続人の死亡によって取得した生命保険金などで、その保険料の全部または一部を被相続人が負担していたものは、相続税の課税対象となります。
ただし、生命保険金は残された家族の生活を保障することを目的としているため、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられているのです。
例えば、ご夫婦と子ども2人のご家庭で夫が亡くなった場合に、1,500万円の現金や預貯金があるとしたら、そのまま相続税の課税対象になります(※)。一方、死亡保険金1,500万円を遺族が受け取るならば、生命保険非課税枠は「500万円×3人(妻・子ども2人)=1,500万円」ですから、相続税の課税対象になりません。
※相続税には基礎控除がありますので、今回のケースで遺産が1,500万円の預貯金のみだった場合、基礎控除の範囲内となるため相続税はかかりません。
相続税の基礎控除額:3,000万円+600万円×法定相続人の数
エンディングノートで想いを伝える
エンディングノートをまとめておくと、万一のときだけでなく、ご自身の急な入院などで配偶者や子どもが家計管理をするようになったとしても、慌てないで済みます。
また、相続について前述のようなご家族間での争いを防ぐために、自分の思いを伝える遺言やエンディングノートなどの準備をすることも大切になります。エンディングノートには遺言と異なり、法的な効力はありません。しかし、遺言は厳格な方式が定められています。まずはエンディングノートに記入して、家族に伝えたいことや財産の状況などを整理してみるとよいでしょう。
最期は自分らしく。残される家族に負担をかけないために!
気になる 葬儀保険 を調べる-
コラム執筆者プロフィール
小山 智子 (コヤマ トモコ) - 宅地建物取引士/AFP/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
- 専業主婦時代に、夫の借金を1,000万円肩代わりする。離婚後「お金を守る知識」の重要性を痛感。現在は、シングルマザーと独身女性の相談業務とマネー講座を中心に活動中。著書「誰にも頼れない女のお金の守り方」(秀和システム)。
鎌倉ウーマンライフプランニングオフィス 代表
ファイナンシャルプランナー 小山 智子
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。