気になるがんゲノム医療、その治療方法や治療費とは?
日本人の死因の第1位はがんとなっている(※)ことからも、がんはまだ怖い病気と思う方もいらっしゃるでしょう。一方で、がん治療は日々進化しています。
今回は、がんの治療方法のひとつである「がんゲノム医療」の治療方法や治療費について解説していきます。
(※)厚生労働省「令和元年(2019)人口動態統計(確定数)の概況」[1]参照
がん罹患数の推移
国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)[2]によると、がん罹患(りかん)数は2018年の診断で約98万例となっています。
がん罹患数の推移を見ると増加傾向にあり、これは日本の人口総数が減るなかで、がん罹患率の高い高齢者の割合が増えていることも影響していると考えられるでしょう。
図1 がん罹患数の推移
※2011年~2015年は地域がん登録、2016年~2018年は全国がん登録の資料を参照
資料:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)[2]ならびに国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ))[3]をもとに執筆者作成
がん治療について
がんの治療には、主に手術・放射線治療・薬物療法といった方法があります。それぞれの治療方法について少し説明します。
(1)手術
手術は、外科的治療ともいい、がんをメスなどで切って取り除く方法です。がんの種類や進行状況に応じて治療方法は異なり、例えば胃がんの場合、腹腔鏡手術や開腹手術があります。
(2)放射線治療
放射線治療は、放射線を当ててがんにダメージを与える方法で、近年では粒子線(重粒子線や陽子線)を使う治療もあります。また、正常な細胞をできるだけ傷つけないで、がんに放射線を集中させるための技術「高精度放射線治療」も開発されています。
(3)薬物療法
薬物療法には、抗がん剤治療やホルモン療法などがあります。近年研究が進むなか、がんゲノム医療による薬物療法も注目されています。がんゲノム医療については次項で詳しく見ていきましょう。
がんゲノム医療とは?
がんゲノム医療とはどのような医療なのでしょう。
図2 がんゲノム医療(イメージ)
資料:執筆者作成
がんは、そもそも遺伝子の変異で起きる病気です。私たちの体の細胞は遺伝子によってコントロールされていますが、その遺伝子に何らかの変異が起きて、細胞ががん化・増殖する病気です。
がんゲノム医療とは、多数の遺伝子を一度に調べて変異を明らかにすることで、一人ひとりに合った治療薬や治療方法を見つけていく医療です。このような医療を個別化医療といいます。
がんゲノム医療はどこでも、誰でも受けられるのか?
厚生労働省は現在、がんゲノム医療を受けられる病院として、12カ所のがんゲノム医療中核拠点病院、33カ所のがんゲノム医療拠点病院を指定し、そして183カ所のがんゲノム医療連携病院を公表しています(2021年9月現在、厚生労働省ホームページ「がん診療連携拠点病院等」[4]を参照)。
また、がんゲノム医療は、誰もが受けられるわけではありません。一般的に推奨されているがん治療を標準治療といい、「標準治療がない場合」や「標準治療を終了したが転移などがある場合」など一定の条件に当てはまり、新たな薬物療法を希望するがん患者が対象となっています。
図3 がんゲノム医療を受ける条件など
資料:執筆者作成
がんゲノム医療の治療費について
がんゲノム医療に進む場合、まず遺伝子パネル検査を行います。この遺伝子パネル検査で遺伝子の変異を見つけ、治療方針を決めていきます。
2019年6月から一部の遺伝子パネル検査は保険適用となったため、17万円ほどで検査が受けられるようになりました(自己負担割合が3割の場合)。
しかし、遺伝子パネル検査で治療の候補となる薬が見つかる確率は、厚生労働省「がんゲノム医療推進に向けた取組について」[5]によると8%程度となっています。
見つかったとしても、未承認薬や適用外薬の場合、一カ月当たりの費用は、50万円未満で済むケースもありますが、300万円以上と高額になる可能性もあります。
なお、患者申出療養制度を利用すると、一部が保険給付対象となるため自己負担が軽減できます。未承認薬や適用外薬の使用を検討する場合には、この制度について知っておくといいでしょう。
図4 患者申出療養制度による医療費負担(イメージ)
資料:厚生労働省ホームページ「患者申出療養制度」[6]をもとに執筆者作成
がん治療の進化に伴い治療方法の選択幅が広がっています。がんゲノム医療などについて知っておくことは、治療成功の可能性を高めるために役立つでしょう。
厚生労働省は、がんゲノム医療に携われる人材の育成や連携病院の追加、先進医療の実施や推進に取り組んでいます。
将来、保険適用になる治療も増えてくるかもしれません。今後もがんゲノム医療の進化に注目してみてはいかがでしょうか。
執筆者プロフィール
髙杉 雅紀子タカスギ マキコ
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP
生命保険会社にて約8年勤務後、住宅建築の建設会社に16年勤務。現在も建設会社で住宅取得資金や住宅ローンアドバイスを行う。さらに、主婦・母・自営業の嫁・親の介護の経験を生かし、教育資金や自営業者の老後資金、保険見直しなどのアドバイスにも力を注ぐ。
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- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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- ※ 掲載日は2021年9月22日です。