もしものとき!ペットを守る救命救急
疾病や突然の事故、災害による命の危険は、人間のみならず、当然ペットにも襲ってきます。今回は、もしものときにも慌てず対応できるように、犬と猫の救命救急について手順を確認しましょう。
筆者も犬を3頭飼っており、ペットの救命救急講習を受けてから「知らないことがたくさんあったなあ」と、知識の重要性をあらためて感じた次第です。
ペットの増加と救命救急の必要性
コロナ禍で自宅にいる時間が長くなり、ペットを飼い始めたという方も多いようです。
飼い始めたペットは大切な家族の一員です。長く一緒に過ごすために、不慮の事態が起こったときに、助けられる命を確実に助ける方法を知っておくことは重要でしょう。
東日本大震災をはじめ、近年の自然災害の増加に伴い、動物の救命・救急・救助・救出・救護は大きな課題となっています。そうしたことから、国内でペットの救命救急やペット防災の講習が行われるようになりました。
ペットの救命救急用整備が進んでいるカナダなどでは、消防車両にペット用の酸素マスクを搭載し、心肺停止や呼吸困難になったペットを人間と同じように助ける用意がされていることがあります。
残念ながら、日本の消防車両にはペット用酸素マスクが搭載されていないようです。まだまだ普及活動が必要なペットの救命救急ですが、大切な家族を守るためにも、飼育する方には知識を得てほしいと思います。
ペットの救命救急
ペットを飼っている方なら誰しも、ヒヤリとした場面を体験しているのではないでしょうか?「異物を飲み込んだ」「他の犬にかまれた」「事故に遭った」「高いところから落ちた」などです。
このような緊急時には、応急処置をして獣医さんに連絡をします。その際、必要情報(意識・呼吸・脈の状態が平常時とどう違うか、カルテ番号、ペット保険の加入有無など)を正確に伝えることができれば、より早く適切な処置をしてもらうことが可能になるでしょう。
そのためには、ペットの平常時の状態を知っておくことが重要です。普段から寝ているときの呼吸のリズムや、胸の上がり下がりが何cmかなどを確認しておきましょう。
さらに、命にかかわるような状態になったときはためらわず、命を守る行動を始めます。防災訓練などで心肺蘇生を経験した方も多いと思いますが、ペットに対しても同じような手順で行います。
普段と様子が明らかに違うペットを発見したら、次の手順で行動しましょう。
図1 もしものときの救命救急手順
資料:執筆者作成
- 自分がケガをしないように、周りの安全を確保します。
- 声や音を出して、顔や尾の反応の観察(意識確認)、外見の観察(外傷の有無の確認)を行います。
- 呼吸と脈の確認を行います。
※片手で気道を確保しながら鼻と口からの息を確かめ、目で胸腹部の動きを見ます。
同時に別の手で心臓、または後ろ足の太ももの内側で脈を確認します。 - ※気道の確保は、ハンカチなどの布で舌を引き出します(ペットの舌はぬるぬると滑るので布でつかみます)。
- 助けを呼びます!(獣医さんへ連絡・タクシーを呼ぶ)
- ※事前にペット同乗ができるタクシー会社を調べておき、なるべく自分で運転をしないようにして、自分は救命救急処置に専念します。
知っておこう、心肺蘇生
上記の手順を行って呼吸と脈が確認できない場合は、心肺蘇生を開始します。まずは胸骨圧迫(心臓マッサージ)を30回行います。
胸骨圧迫の要領は次のとおりです。
図2 胸骨圧迫
資料:執筆者作成
- まずペットの背部に座ります。
- 心臓の位置は、前足を曲げたときに肘が当たるところです。
- 体幅の3分の1~2分の1の深さまで押します。
- リズムは1分間に100~120回のペースです。
- 小型犬や猫は、片手または指で行います。
- 胸部が広い犬(パグやブルドッグなど)は、あおむけで行います。
次に、人工呼吸で2回息を吹き込みます。この流れを繰り返します。
図3 人工呼吸
資料:執筆者作成
ペットの人工呼吸は、人間と異なる点が多いので注意が必要です。
- ペットの口を閉じて鼻から息を吹き込みます。肺の大きさを考えて1~3秒かけてゆっくりと慎重に行います。
- 胃に入ったりしないように、吹き込みすぎないことが重要です。
もしもに備えて普段からしておくこと
心肺蘇生は、始めてから獣医さんに引き継ぐまではタクシーに乗っている間も休まず続けなくてはいけません。救命処置を単独で行う場合に備えて、獣医さんに引き継ぐまでの時間をなるべく短くする工夫が必要です。
救急で診てもらえる病院は2カ所以上調べておき、タクシー会社と併せてスマートフォンなどの電話帳に番号登録をしておきましょう。ペット保険に加入している方は、受けられる補償やサービスの内容も確認しておきます。かかりつけ病院に行く場合にも備えて、診察券を常に身近に置き、カルテ番号をすぐに伝えられるようにしておきましょう。
救命救急は時間との勝負です。普段からペットの元気な状態を観察して、いざというときは、ためらわず行動ができるように準備をしておくことが大切ですね。
執筆者プロフィール
梅田 雅美ウメダ マサミ
CFP、防災士
証券会社、都市銀行、生命保険会社などを経てライフ&ビジネス・デザイン合同会社を設立、代表社員を務める。2020年現在、目黒区議会議員としても活動し、行政にFPの視点から改革を起こすために奮闘中。リスク管理を得意とし、現実的なアドバイスを行う。また高齢社会へ向けて健康維持、予防活動にも力を注いでいる。
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- ※ 掲載日は2021年6月10日です。