
【保険選びの極意2】医療保険は本当に必要なの?
- 医療保険は不要だというFP(ファイナンシャル・プランナー)がいる一方で、医療保険は自分が生きていくために重要な保険で必ず入っておくべきだという保険のプロもいます。相談者から「どちらが本当ですか?」と聞かれたときに、保険販売を一切行っていないFPの立場としてお話しをする、医療保険見極めのコツをご紹介します。

1. 「医療保険不要論」の根拠とは
医療保険は病気やケガの治療のために入院したり、所定の手術を受けたりしたときに給付金が支払われる保険です。入院1日あたり1万円の給付が受けられる医療保険であれば、手術給付金は1回あたりおよそ10万円~40万円(商品により異なります)。先進医療を受けたときに、先進医療の技術料が支払われる「先進医療特約」を付けたとしても、1回の給付で受けられる金額は多くても数百万円といったところです。医療保険は不要だという人のそもそもの根拠としては、大きく次の3点が挙げられます。
- 保険は大きなリスクに備えるものであり、医療保障のような少額な保障の必要性はそもそも低い。
- 公的医療保険制度である健康保険には、高額療養費制度があるので、保険診療で治療するかぎりかかる医療費は限定されている。
- 会社員であれば病気やケガで休職したとき、健康保険から給与の3分の2に相当する傷病手当金が最長1年半は支給される。
上記の指摘は確かに本当です。「発生頻度は低いが、発生すると損害の大きなものを保険でカバーする」というのがリスクマネジメントの基本ですし、高額療養費制度も傷病手当金もおっしゃる通りの性質をもっています。
しかし、例えば生活保護費の約半分は「病気やケガの治療費用(医療扶助費)」であるのも事実。リスクマネジメントの観点からは少額である数万円~数十万円の出費で生活が困窮することは珍しくありません。あなたがどんなライフスタイルを送っているかによって、医療保険の必要性は大きく異なるのです。
2. 不労所得がどれだけあるか、余裕資金がどれだけあるかがカギ
医療保険の必要性を左右するのは「不労所得」と「余裕資金」です。この2つが十分にあれば、医療保険に入る必要はほとんどないといっても過言ではありません。
「不労所得」とは、働かなくても得られる収入のこと。株式の配当や不動産の賃貸収入など、自分が働かなくても定期的にもらえるお金がある程度あれば、病気やケガで仕事ができなくなっても生活に困る可能性は低くなります。会社員に支給される傷病手当金も、ある意味では不労所得の1つです。給与の3分の2相当の収入で家族の暮らしと治療にかかる医療費が賄えるのであれば、医療保険は入らなくても困りません。
「余裕資金」とは、使う予定のない貯金のこと。余裕資金で医療費が賄えるのであれば医療保険でもしものときの収入を確保しなくても暮らしていけます。
ただ、不労所得以上に生活費が膨らんでいる場合や、余裕資金を株式投資などの変動幅の大きいもので運用している場合はその限りではありません。医療費を補てんする程度の医療保険には入っておくか、生活費をスリムにする努力を始めるなど、なんらかの対策をとっておいた方がいいでしょう。
高額療養費制度の「限度額認定証」を使えば、自己負担となる医療費は多くても月15万円~16万円程度+入院中の食事療養費(1食260円)です。一般世帯(標準報酬月額53万円以上の上位所得者にも住民税非課税世帯の低所得者にも属さない世帯)であれば、月8万円~9万円程度+入院中の食事療養費となります。一般世帯の場合、1日1万円の差額ベッド代がかかる個室に入ったとしても、だいたい40万円~42万円程度の医療費(その月の1日~30日まで入院した場合。入院期間が月をまたぐときはさらに8万円~9万円上乗せして考える必要があります)の出費と、治療中に働けないことにより生じる収入ダウンのダブルパンチを受けたとしてもビクともしない家計であれば、医療保険に入る必要はない、ということです。
このようにある程度リアルな数値で考えていくと、病気やケガをしたときの家計の影響を疑似体験することができますね。これだけの出費と収入の減少に耐えられる家計かどうかは、人それぞれです。シミュレーションしてダメージが大きそうと思ったら、医療保険で備えるべきです。この程度ならなんとかなるなと思ったら、医療保険に入る優先順位を下げればいい。そういった感じで判断してみてください。
3. 医療保険選びのポイント
医療保険には、10年などの一定期間ごとに更新する「定期型」と生きている間ずっと保障を継続できる「終身型」があります。計画的に貯金したり、投資などでお金を増やしたりしていて、老後の医療費は貯蓄などでまかなおうと思っている人は定期型を、そうでない人は終身型を選びましょう。定期型か終身型かの見極めのポイントは、老後の医療保障をどう考えるかによります。定期型の場合、更新のたびに保険料が高くなり、高齢になると保険料負担が大きくなります。定期型を選ぶ場合は、遅くともリタイア後には保険を解約する前提で利用するのが賢明です。
医療保険の保険料は、入院給付金日額により変動します。心配だからといって入院給付金日額を高額にしてしまうと、その分、保険料負担が重くなります。医療保険の入院給付金日額は5,000円~1万円が目安です。
医療保険の主契約となるのは、「入院保障(入院給付金)」と「手術保障(手術給付金)」です。保険商品にもよりますが、それ以外の保障については取り外すことができるものも増えています。保障の内容がよくわからない、内容はわかるけど自分には必要ないと思ったら取り外せないか保険会社に問い合わせてみましょう。
医療保険で付けておいたほうが便利なのは、「先進医療特約」です。先進医療は厚生労働大臣によって定められた治療方法で、特定の医療機関でしか受けられませんが、保険料は月100円前後とそれほど高くありません。いざというときの選択肢を広げておく意味でも、付けておいたほうが安心でしょう。
最近では、がんと診断されたときに一時金が支給される「がん診断給付金特約」を付加できる医療保険も増えています。がん保険に入っていない人であれば検討の価値ありです。一般的に、がん保険と医療保険を別々に入るよりも保険料負担が軽くなります。

コラム執筆者プロフィール
柳澤 美由紀(やなぎさわ みゆき)
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コラム執筆者プロフィール
柳澤 美由紀(やなぎさわ みゆき ) -
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
関西大学社会学部卒。大学時代に心理学を学び、リクルートグループに入社。求人広告制作業務に携わった後、1997年ファイナンシャルプランナー(FP)に転身する。
相談件数は800件以上。家計の見直し、保険相談、資産づくり(お金を増やす仕組みづくり)が得意で、ライフプランシミュレーションや実行支援も行っている。
家計アイデア工房 代表
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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