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AIがもたらすマーケティング革命

牛窪 恵さんコラム - 第3回

企業の存在意義が問われている

現在、マーケティングの世界ではChatGPTなどのAI活用が急速に広がっているだけでなく、AI自体も驚くべきスピードで進化しています。このコラムでは、ChatGPTのメリットとリスク、マーケティング分野でのAI活用の現状についてご紹介してきました。最終回では、AIやニューロマーケティングによって未来の消費はどのような形に変化する可能性があるのか。AIがいま企業や私たちに突きつけているものは何なのか。そんなお話をしたいと思います。

「欲しいモノがない」時代、いかにして消費者の潜在ニーズを掘り起こすか?

現在の消費社会の大きな課題は、消費者が心から欲しいと思うものが見えにくくなっていることです。日本は人口減少社会であるうえ、消費者の多様化が進んでいますから、大量生産・大量消費は望みにくい環境です。ただ逆に、企業がイノベーティブなモノを開発し、「これなら理想の暮らしを叶えてくれそうだ」と高付加価値を感じてもらえれば、多少高額でも購入してくれる消費者はいるはずだ、とする考え方が、昨今の国内マーケティングの主流です。

たとえば、最近の大ヒット商品である「ノンフライヤー」は、その良い例でしょう。油を使わずに揚げ物を調理できるので、「油の飛びはねを気にせず、作るのも後片付けも簡単」などと、消費者の心に刺さりました。ただし、彼らが最初から「ノンフライヤーのようなものが欲しい」と言ってくれれば楽なのですが、そうはいきません。現代の消費者にインタビュー調査を行っても、大抵は「欲しいモノは、とくにない」と言われてしまいます。ニーズが顕在化しているケースは稀で、ノンフライヤーが完成して目の前に置かれて、ようやく「そういえば、こういうのが欲しかった」と言ってくれるニュアンスです。

ゆえに私たちマーケッターは、消費者自身が意識の奥にしまって気づかずにいる「潜在ニーズ」を掘り起こさねばなりません。その際、10年ほど前までは「ラダリング」と呼ばれるインタビュー手法が一般的でした。「なぜ?」を何度も繰り返すことで人々の深層心理に迫る手法ですが、令和の今はそこに手間やコストをかけるより、アイトラッキングやニューロマーケティングなど、視線の動きや脳科学を応用したマーケティング手法を、積極的に採用するようになったのです。

言語化できないニーズや「セレンディピティ」にも応えるニューロマーケティング

みなさんも「なぜそれを買ったのか」と聞かれ、「『なんとなく』購入しただけなのに」と、答えに困ってしまうことはないでしょうか。人間は自分の行動や欲求を、必ずしも明文化や言語化できるとは限りません。ですので、インタビューやアンケートの回答をそのまま鵜呑みにするのは本来、危険です。そこでテクノロジーを用いて、視線の動きや脳の血流量、あるいは脳波や心拍などを計測し分析することで、消費者の言語化できない感情や無意識で行っている意思決定プロセスを把握し、マーケティングに活用する。それが、ニューロマーケティングのメリットの一つです。

そのための技術開発も飛躍的に進み、さまざまな調査研究に活かされています。たとえば、手のひらサイズのデバイスで、脳の大脳皮質部分に微弱な近赤外光を照射し、血流変化を計測して脳活動を「見える化」する技術があります。また、視線の動きや瞳孔の変化などを計測するアイトラッキングや、店頭のカメラで顔の表情を計測して感情を読み取るような技術も、一般的になりつつあります。

令和の今は、このような最新技術を使うことで、消費者が自ら気づいていない、先の「潜在ニーズ」を掘り起こすことも可能になりました。さらに、消費者が脳内で「なんとなく欲しい」とさえ思っていないものまで、AIが計算したうえで「セレンディピティ(偶然の出会い)」だと感じさせ、意外性を伴って提示(レコメンド)できるような技術も、開発が進んでいます。

人も企業も「何のために存在するのか」といったパーパスが問われる

AIやロボット研究者のなかには「AIやロボットを研究することで、我々人間の存在意義や存在理由を知りたい」と考える人も少なくありません。確かに、AIやロボットが人間に近づけば近づくほど、「人間にできることは何なのか」「人間は何をするべきなのか」「そもそも人間とは何なのか」が問われます。

同じようなことは、企業にも当てはまるのではないでしょうか。たとえば今、マーケティングや経営学の世界では「パーパス(企業としての存在意義)」という言葉が、時代のキーワードです。これまで、人や企業は、世の中に存在するのが「当たり前」だと考えられてきました。ですが、カーボンニュートラルをはじめとした環境問題や国家間での経済格差の問題などを鑑みると、人や企業の存在自体が、もしかすると環境や格差を助長し、SDGsの達成を妨げているかもしれないのです。

だからこそ、「自社は何のために存在するのか」「社会課題にどう貢献できるのか」といった自社の存在意義を明確にし、それを認知してもらうことで、IRやブランディングに良い影響を与え、人々からの共感や信頼にもつなげる。そのような経営者の意思表明が、強く求められる時代になりました。

「何のため」の問いは、AIの導入や活用についても重要です。AIにどこまでを任せ、自社や従業員は何をするのか。AIと分担して進めていく事業やタスクによって、自分たちが目指すべき未来の方向性や使命感は、どこにあるのか。そこを明確にしないまま、ただ便利だからと安易にAIを無制限に導入・活用していると、いずれは会社や自分たち自身が存在意義を見失い、十数年後にはAIに代替されてしまう可能性もあるのではないでしょうか。今、AIによって企業や私たち一人ひとりの存在意義が、まさに問われているのです。

PROFILE

牛窪 恵

牛窪 恵(ウシクボ メグミ)

世代・トレンド評論家、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科客員教授・修士

1968年東京都生まれ。日本大学芸術学部映画学科(脚本)卒業後、大手出版社に入社。フリーライターを経て、2001年4月にマーケティングを中心に行う有限会社インフィニティを設立。2019年3月立教大学大学院(MBA/経営管理学)・博士課程前期修了。トレンド、マーケティング関連の著書多数。「おひとりさま(マーケット)」(2005年)、「草食系(男子)」(2009年)は、新語・流行語大賞に最終ノミネート。フジテレビ系「ホンマでっか!?TV」、NHK総合「サタデーウオッチ9」、毎日放送「よんチャンTV」ほかでコメンテーター等を務める。

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